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あまくさ乳腺クリニック
所在地:熊本県天草市
用 途:クリニック(乳腺外科)
構 造:木造在来工法2階建て
床面積:243㎡
女性医師が故郷天草で地域医療貢献をしたいという想いから新規開業された天草地域初の乳腺専門クリニック
熊本市内の大学病院に勤務されていた女性医師が、故郷天草で地域医療貢献をしたいという想いから新規開業された天草地域初の乳腺専門クリニック。
先生より、当事務所に設計相談の連絡メールが初めてあったのがクリニックオープン希望日の13ケ月前でした。
通常のクリニックの開業スケジュ-ルと比べると非常にタイトな中、計画~設計~諸申請手続き~施工者決定~工事と、先生の設計側のパートナ-して事業スケジュ-ル全体管理及び建設コスト管理を行い、設計当初に設定した予算内と、当初に希望された開院日に無事にオープンができたプロジェクトです。

本計画の敷地は、天草市(旧本渡市)を横断する国道324号から約100m入った小規模区画開発地の一角で、周辺には大型遊戯施設とその駐車場、住宅、低層の事業所事務所、賃貸マンション、そして田畑が混在しており都市と郊外の性格が交差する環境が広がっていました。また、幅員8mの前面道路に面し眼科や皮膚科の2件のクリニックが建ち並んでいました。
建物の配置計画は、敷地南側の道路角地に駐車場を配置し建物を北側へ寄せることで、遠方からでも来院者が建物存在自体を認識しやすいようにしました。また、敷地から西の方角約50mに位置する鎌倉時代に創建されたと伝わる本戸馬場八幡宮があり、その歴史的・精神的文脈に配慮し、秋の例大祭の神幸行列が通る「神の通り道」の記憶(参道)をこの建物(クリニック)が遮らないために余白を残した配置としました。

乳腺診療で来院者の多くが女性であることから「治療・検診の場」である以前に、プライバシ-が確保された「安心して身を委ねられる居場所」となる施設を目指しました。

上写真:東側外観を見る。
1階を診療スペース、2階をスタッフ部門と明確にゾーン分けしています。
2階諸室を南側(駐車場側)に寄せ北側を平屋とすることで、隣接する北側の土地への日影の影響が最小限となるようしています。2階部分をセットバックさせることで道路へを通る車や地域住民への圧迫感を軽減させ、風景として繋がる街並みのスケ-ルに合うようにしています。
道路から中にいる人が特定されない適度な距離感の確保と外壁の開口の構成によって視線制御を行っています。
外壁上部に大きなサインを設けないという先生の判断も、通院を知られたくないと思う患者さんへの配慮です。


外観は「外壁~樹木ゾーン~建築本体」と段階的に形(ボリューム)をつくり、建物自体に奥行き感をつくることで歩道を歩く人への圧迫感を緩和しています。
外周の壁は完全に閉じ切らずに大小の開口を点在させて設け、外と室内が気配を通してゆるやかにつながる関係性をつくっています。
(女性スタッフが多い施設のため、防犯上から仮に不審者が侵入してきた時に、多少なりとも外部に室内の気配・雰囲気がわかるように)
外壁の足元を地面から少し浮かせて部分的にオープンにすることで、室内から歩道の植栽や隣接地の樹木を借景し、周辺の環境が室内へ滲む構成としました。
また、クリニック外壁から街に対し溢れる木々の緑、道路の植栽、対向地に植えられた高木とが重なりあい、本クリニックによって潤いのある新しい風景をつくることで、医療を通して地域貢献するクリニックのコンセプトを建築の表現によって寄与してしています。

上写真:メイン入口部分を見る。
足元の少しオレンジがまざった白い砕石は、熊本県内の人にもあまり知られていない地元で採れた天草陶石を敷きつめています。
また、一般の患者さん用とは別に、感染症の患者さんが駐車場に車を横づけし、一般患者さんと接触せずに直接診察室に入れる専用の入口を設け、動線分離と心理的領域を確保しています。
下写真:右側の手洗いボウルも天草陶石を原料として成型された製品を使用。


上写真:外待合 下写真:中待合
患者さんのプライバシ-の確保から、一般的にクリニック建築では多い待合を全面ガラス張りにし室内の雰囲気を街に対し開く形にせず、外周に高さ約4mのL字状の外壁を巡らせ、その内側に樹木を植えたバッファゾーンを設けました。患者さんの利用する室の窓は、全て緩衝帯に向けてのみ設け、外部からの視線を遮りながら柔らかな光と木々の表情を室内に導いています。


上写真:診察・エコ-前の待機スペ-ス兼廊下。
廊下の幅は、もしもの時にために救急隊のストレッチャ-が通れる寸法を確保しています。
内装デザインは、壁のベースカラ-に「グレージュ」色を採用し、女性的な印象をつくり空間全体に上品さとあたたかさと清潔感を意識し、患者さんの心が落ち着く雰囲気にしています。
照明計画は、外部から諸室に入っていくごとに「自然光」から「間接照明」へとグラデ-ションのように徐々に空間の質に変化をつけていき、空間に奥行きと温かみと落ち着きを与え、来院・診察される方の緊張が自然とやわらぎリラックスできる空間にしています。





大小様々な開口を設けた全長約30mの白い外壁は、街灯が全く無い前面道路を、室内から漏れてくる灯りによってほのかに照らし歩道を歩く歩行者の足元の安全性を確保し、ライトアップされたクリニックの存在が地域貢献をしています。

デザインは、主張を抑えた輪郭として街並みに溶け込み、院長先生のやさしく患者さんへ寄り添うその想いを具現化した施設としての姿を形づくっています。

