TEL096-223-6263

所在地:熊本県阿蘇市乙姫
用 途:公衆浴場(家族風呂)
構 造:木造在来工法・平屋
床面積:197㎡
阿蘇五岳の麓、阿蘇市乙姫に広がるコスギリゾート内に計画された家族風呂温泉の増築棟。
ゴルフ場やグランピング施設、既存の温泉施設など多様なアクティビティが共存するリゾートの一画に位置し、既存の15室の家族風呂施設と敷地内道路を挟んで向かい合う不整形な残地が今回の増築棟の建設地でした。
既存の家族風呂は、開業から10数年が経過し、コロナ禍の影響や、近年、大浴場ではなく家族やカップルのみで利用できる入浴形態への需要増加により、週末には長時間の順番待ちが生じる状況となっていました。これを受け、本計画は新たに7室の家族風呂を増築することで、リゾート全体の受け入れ機能の向上を図るプロジェクトでした。

上写真:工事前の植栽の伐採が完了した時点の建設地
建設地は四方すべてがリゾート利用者の動線に囲まれ、さらに隣接するゴルフ場およびグランピング施設の敷地の方が一段と高くなっており、一番重要なプライバシ-の確保の観点で、周りが上方からの視線が生じているという特有の条件を抱えていました。
当事務所に求められたのは、入浴者のプライバシーを最優先に確保しつつ外部に対して解放感を持った空間、リゾ-ト施設内に建ち視認性あるデザイン性の高い建築、家族風呂空間で日常から解放された非日常を演出した温泉空間をつくることが大きなテーマでした。
そこで、「この阿蘇の自然の中で、人目を気にせず癒される現代的なプライベ-ト温泉リゾ-ト」をコンセプトに設計しました。


周辺の各方向からの視線の検討を綿密に行い、浴室や屋外テラスが外から絶対に覗かれない位置・方向に、浴室の窓・テラスがくる配置・平面計画としました。
非日常性の演出から、アプロ-チは別棟にした2棟の間から入る長い動線をつくって各室へ入場する動線とすることで、非日常への期待感・ワクワク感を生みだす効果を生みだしました。
また、施設管理コストの低減から、外構の植栽は最小限のつくりとしています。


建築の構成において、遠景では既存の温泉施設と連続して見えるよう勾配屋根を採用し景観の統一性を図っています。一方、近景においては、阿蘇の山並みや周りの起伏ある地形、自然に育つ木々の有機的な樹形と対比するよう水平性を強調した建築としています。



室内外のデザインは、既存施設が「和」を意識したデザインであっため、増築棟はお客さんがその日の気分で部屋を選択する楽しみができるよう「洋」の雰囲気を取り入れ既存との差異をつくりました。既存は瓦屋根や杉板の下見板張りや塗り壁仕上げだったため、増築棟は金属板で下見板風に見せるなど素材や形態で、差異をつくりながら温泉施設全体の連続感をつくるデザインとしています。



上写真3枚:特別室
特別室は、周囲からの視線のコントロールを建築形態と配置によってクリアし、空を切り取る非日常の露天風呂空間をつくりだし、周囲の賑わいから切り離された空しか見えない静かな入浴体験を生み出しています。



上写真3枚:特別室夜景
一般室は部屋を連続して設けているため、屋外テラスに設けた目隠し壁に沿って上部から滝のように水を流すことで、水面に反射した水音が隣接する部屋の話し声や物音を打ち消し、周囲の賑わいから切り離された入浴体験を生み出すことを意図しました。
下写真3枚:一般室、一番下の写真は一般室の共用トイレスペ-ス




本計画は、機能拡張としての増築にとどまらず、建築そのものが新たな風景の一部としてリゾートに加わることを目指した試みです。
自然と人工、動と静、その境界に立ち現れる建築の佇まいが、訪れる人々に穏やかな時間をもたらすことを意図しています。

